
Z世代はストレス耐性が低い?世代間ギャップを強みに変える関係性重視の職場づくり
Z世代が新卒採用市場に参入してから、すでに一定の年月が経過しました。職場内で着実に居場所をつくり上げるなか、そのストレス耐性に疑問を抱かれるケースが増えています。実際のところ、Z世代のストレス耐性は低いのでしょうか?それとも高いのでしょうか?この記事では、Z世代のストレス耐性に焦点をあて、その背景と寄り添い方のヒント、さらに組織力を高める効果的な施策をご紹介します。

「Z世代のストレス耐性」が注目されるのはなぜ?
Z世代とは、一般的に「1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代」をいいます。
物心ついたときにはインターネットやスマホが身近にあったいわゆる「デジタルネイティブ」世代で、大量の情報とともに多様な価値観を自然と身につけている世代でもあります。
一方で、Z世代を教育・監督する立場の人材からは、「Z世代はストレス耐性が低い」との声が聞かれるスケースが少なくありません。
実際に、厚生労働省のデータによると、新規大卒就職者のうちおよそ3人に1人にあたる34.9%が3年以内に離職している実態があります。
少子高齢化にともない、優秀な人材の獲得・定着がますます困難になるなか、せっかく採用した新卒者が早期に離職してしまうことは企業にとって深刻な課題です。
こうした状況を受けて、多くの企業がZ世代の「ストレス耐性」に注目し、どのように向き合えばよいのか模索しているのです。
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
Z世代は本当にストレスに弱いのか?管理職が抱く印象とその実態
Z世代の上司にあたる管理職からは、しばしば「Z世代は打たれ弱い」「扱いづらい」との声が聞かれます。しかし、それは本当なのでしょうか。現場で語られる印象と、Z世代自身が感じているストレスの実態を比較してみると、そこには大きな誤解やズレが見えてきます。
管理職から見たZ世代の特徴|すぐ辞める・叱れない
現場でZ世代に対してよく聞かれる印象を以下に整理しました。
- 注意したらすぐに辞める
- 何の前触れもなく辞める
- 平気で口答えをする
- 何を考えているかわからない
- 仕事を軽く考えている
- 組織に馴染もうとしない
人材の獲得競争が激化するなか、せっかく獲得した人材を辞めさせるわけにはいかないとの思いから、「叱るべきシーンで叱れない」とこぼす管理職も少なくありません。
従来の指導方法や職場の文化に慣れ親しんだ管理職にとって、Z世代の反応や行動は理解しづらく感じられるもの。
しかし、これらの印象は本当にZ世代の特性を正確に表しているのでしょうか。
Z世代のストレスの原因は「価値観のズレ」
Z世代が職場で感じるストレスの原因として、多くを占めているのが「上司世代との価値観のズレ」です。
デジタルネイティブとして生まれ育ち、幼少期から世界中の情報に触れることができる環境で成長してきたZ世代は、管理職世代とは根本的に異なる価値観を持っています。
特に顕著なのは、ワークライフバランスを重視する姿勢。仕事を人生の中心に据えるのではなく、プライベートや自己実現とのバランスを大切にする傾向があります。
またこの世代は、公平・平等を前提に、ハラスメントを糾弾されるべきものとして育ってきた世代でもあります。たとえ相手が上司であったとしても、納得できないことについて声を上げることを恐れません。
それにもかかわらず、上司からは「やる気がない」「生意気」と評価されてしまう——そんな価値観のズレが、Z世代にとってストレスの大きな要因となっているのです。
上司世代との衝突を避けるため極端に萎縮してしまい、本来の積極性や個性を生かせないケースも……。
ある対話の場でZ世代の社員がこう言いました。
「”自分で考えろ”って言われても、どこまで考えていいかが分からないんです」
これは、思考力の欠如ではなく、”考えていい”という安心感が土台にない状態です。
私たちは、過去には「成果を出す人を育てる」支援をしてきました。
でも、今感じているのは、「存在を信じられる人」を育てることの大切さです。
考えてもいい、言ってもいい、間違ってもいい。
そう思える関係性こそが、Z世代の「ストレス耐性」を支える土壌になります。
【株式会社Meets & Dialogue| 代表 森慶介】
Z世代のストレスが企業にもたらすリスク
Z世代のストレスを放置すると、企業にはさまざまなリスクが生じます。これらのリスクを理解することにより、ストレスを生まない職場づくりの重要性が見えてきます。
離職率が高まる
Z世代は、自分に合わない環境だと判断した場合、早々に見切りをつける傾向があります。
これは決して忍耐力がないからではありません。幼少期からインターネットを通じて広い世界を見ている彼らは多様な選択肢があることを知っており、無理に我慢し続けることの意味を見出しにくいからです。
「就職みらい研究所」によると、新卒採用には1人あたり93.6万円のコストがかかっています。Z世代が実際に離職した場合、このコストが無駄になるだけでなく、次世代の育成も困難に。
継続的な人材流出は組織の知識やノウハウの蓄積を阻害するため、長期的な競争力の低下にもつながりかねません。
上司のストレス度が高まる
Z世代に対して「叱れない」「どう伝えたらいいかわからない」という悩みを抱える管理職は少なくありません。従来の指導方法が通用しないことで、管理職側が委縮したり、過度なストレスを抱えたりするケースも見られます。
この状況を放置すると、「ヘタに刺激するくらいなら放っておこう」「できることだけやらせよう」との発想に至りやすく、指導放棄や育成放棄の原因となることも。
場合によっては、管理職自身の離職リスクも高まりかねません。
組織の生産性が低下する
表面化しづらいZ世代のメンタル不調は、休職・パフォーマンス低下・人間関係の悪化の原因となります。対応が遅れると職場全体の空気が重くなり、離職が連鎖する悪循環に陥る可能性も。
また、従業員の健康問題は、精神的なものも含めてプレゼンティーズム(出勤しているが体調不良等で生産性が低下している状態)やアブセンティーズム(病気休業)の原因となります。
目には見えないながら、長期的に企業の生産性に大きな影響を与えるため注意が必要です。
企業イメージや採用力が低下する
SNSが発達した現代。企業の評判はネットを通じて瞬時に広まります。
特にネガティブな話題の拡散力は高く、尾びれをつけて世界中に拡散されることに。いったん「前時代的な体制の職場」「働きにくい企業」とのレッテルが貼られてしまえば、そのイメージを払拭することは困難です。
イメージが悪い企業は、当然ながら求職者から敬遠されるため、採用力の低下は避けられません。
さらに深刻なのは、こうした評判の悪化が企業経営全体に波及することです。従業員の定着率低下や職場環境の悪化は、投資家が重視するESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも問題視され、企業価値の低下を招く恐れがあります。
Z世代が職場でストレスを感じるとき
Z世代が職場で「しんどい」と感じるのは、仕事や組織のあり方が世代の価値観と噛み合っていないためです。これはストレス耐性の低さではなく、「環境とのズレ」によって職場が負担になっている構造的な問題として捉える必要があります。ここで、Z世代が職場でストレスを感じる根本的な原因をひも解いていきましょう。
仕事の目的が見えない
Z世代は「意味」や「納得」を求める傾向があります。背景説明のない業務や、単純に作業を繰り返すだけの仕事にストレスを感じやすく、「そういうものだから」という説明では納得できません。
彼らにとって重要なのは、自分が行っている仕事が何のためにあり、どのような価値を生み出しているのかを理解すること。この理解なしには、モチベーションを維持することが困難になります。
指示があいまい|フィードバックがない
「自由にやっていい」「うまくやって」といった抽象的な指示は、Z世代にとって不安の原因となります。従来の「見て盗め」「背中を見て覚えろ」という指導方法も通用しません。
彼らが求めているのは、明確な指示と定期的なフィードバックです。どのような成果が期待されているのか、現在の取り組みがどう評価されているのかを知ることで、安心して業務に取り組むことができます。
評価の基準がわからない
成果評価が不透明な環境では、努力すべきポイントがわからず、モチベーションの維持が困難になるのもZ世代の特徴です。
特に、直属の上司との相性によって評価が大きく左右されるような環境では、パフォーマンスも落ちやすくなります。
公正で透明性のある評価制度は、Z世代にとって働きやすさを左右する重要な要素のひとつです。
心理的安全性がない
ハラスメントに対する意識が高いZ世代にとって、昭和・平成的な「厳しく育てる」職場文化は適応困難な環境です。
「求められる役割を果たせない」「ありのままでは受け入れられない」と感じると、萎縮してしまい十分な能力を発揮できません。
心理的安全性が確保された環境でこそ、Z世代は本来の力を発揮し、積極的に貢献していくことができるのです。
あるチームでZ世代の社員が、しばらく沈黙したあとにこう言いました。
「何故かわからないけど…”ちゃんとしなきゃ”って、ずっと思ってました」
その言葉を皮切りに、場が緩み、他のメンバーも「私もです」と語り始めました。
対話は、問題を解決するためのものではなく、安心して”不完全なまま”でいられることを共有することに本質があります。
【株式会社Meets & Dialogue| 代表 森慶介】
Z世代特有のストレス耐性に寄り添うには
企業には、Z世代のストレスの感じ方に合わせた対応が求められています。ここでは、Z世代をサポートし、無理なく共存するために企業ができる具体的な取り組みを提案します。
コミュニケーションを惜しまない
管理職世代をはじめとする先輩従業員のなかには、Z世代を「扱いにくい」と感じて距離を置いてしまう人もいます。しかし組織内での孤立は強いストレスを生み、離職の大きなきっかけになります。
これを避けるために必要なのは、コミュニケーションを惜しまず、Z世代が安心できる居場所をできるだけ多く用意すること。具体的には、1on1やメンター制度、シャッフルランチなど、横のつながりをつくる取り組みが、Z世代の居場所づくりにつながります。
重要なのは、形式的なコミュニケーションではなく、Z世代が困ったときや悩んだときに安心して助けを求められる場を提供することです。
失敗をフォローできる体制を整える
「自分は自分、人は人」の意識が強いぶん、他人に迷惑をかけることに強いストレスを感じるZ世代。失敗を恐れるあまり、思い切った挑戦ができない傾向があります。
そんなZ世代にのびのびと実力を発揮してもらうには、何かあっても大丈夫だと確信できる体制をつくり、それを周知することが何よりも大切。
仮に失敗をしたとしてもフォローできる体制を整え、それをしっかりと伝えましょう。
以前、「挑戦するのが怖い」と語った若手がいました。
話を丁寧に聞いていくと、彼はこう言いました。
「迷惑をかけたくないんです。だから、自分にできないことには手を出さないようにしていて……」
彼の中には、「人に頼ることは、相手の負担になること」「ミスはすべて自分で背負うべき」という思い込みがありました。
それは、周囲を思いやる気持ちの裏返しでもありましたが、同時に「何かあっても、自分ひとりで責任を取らなければいけない」という孤独感を深めていたのです。
だからこそ、対話の中で、「たとえ失敗しても、あなたの価値は変わらない」と伝えることが大切です。
チームの安心感は、制度やルールで整えるものではなく、”その場にいる他者”の在り方から、広がっていくのだと実感しています。
【株式会社Meets & Dialogue| 代表 森慶介】
指示は「目的」と「背景」をセットでおこなう
納得感を大切にするZ世代には、業務について背景と目的をセットで伝えることが大切です。
単に「この資料を見直してください」と指示するのではなく、「来月のプロジェクト会議で、クライアントに提案内容を分かりやすく説明するためにこの資料が必要です。より説得力のある提案になるようブラッシュアップをお願いします」といった形で伝えましょう。
なぜその仕事が必要なのか、どのような成果を期待しているのか、そして自分の役割がどう全体に貢献するのかを理解することで、単なる作業ではなく意味のある仕事として取り組むことができます。
Z世代のストレス|組織全体で取り組むべき課題とは
Z世代の扱いに悩む管理職は少なくありませんが、個人の努力だけに責任を負わせても根本的な改善はできません。ここで、職場全体での取り組みのヒントを紹介します。
「ストレスに強い職場は、誰にとっても働きやすい」を共通認識に
心理的安全性や明確な目標設定、透明性のある評価制度といったZ世代が求める環境は、実は全世代にとって働きやすい環境でもあります。
Z世代に対する配慮を「特別扱い」と捉えるのではなく、組織全体のパフォーマンス向上のための投資として位置づけましょう。誰にとっても働きやすい環境は、長期的に離職率の低下、生産性の向上、イノベーションの創出につながり、企業としての競争力強化が期待できます。
「価値観の違い」を組織内で共有・すり合わせる仕組みをつくる
世代間で考え方が違うのは当然のことです。それぞれが育った時代背景や社会環境が異なれば、仕事に対する価値観や優先順位が違うのはむしろ自然なことといえるでしょう。
組織として重要なのは、この違いを前提として受け入れること。お互いを理解できないからと敬遠するのではなく、積極的に考えを伝え合い、理解し合おうとする社風をつくることです。
なぜそう考えるのか、どのような経験がその価値観を形成したのかを共有することで、違いを認め合いながらも協働できる関係性を築くことができます。そのための定期的な対話の場づくりが不可欠です。
50代の上司と20代の若手が、「遅刻」の意味について真剣に語り合う場面がありました。
上司は「時間を守ることは礼儀であり、信頼の基本だ」と主張し、若手は「業務に支障がなければ、重要ではない」と返します。
一見すると価値観のぶつかり合いでしたが、対話を重ねるうちに、それぞれの考え方がどんな経験や時代背景から生まれてきたのかが見えてきました。
そのとき、両者の間に「納得」や「共感」は生まれなかったかもしれませんが、「違いを否定せずに受け止める」姿勢が育まれていきました。
すり合わせとは、どちらかが正しさを譲ることではなく、互いの前提を理解した上で、共に歩める幅を探っていくプロセスです。
【株式会社Meets & Dialogue| 代表 森慶介】
セルフマネジメント型の組織づくりを進める
Z世代を中心とする多様化する価値観を内包した組織づくりには、トップダウン型ではなく、セルフマネジメント型の組織づくりが必要です。一律の指示や管理ではなく、個人が自分らしさを活かしながら自律的に行動し、チーム全体で支え合う文化を醸成することが求められます。
これは単なる放任主義ではありません。明確な目標と責任範囲を共有した上で、達成方法は個人の創意工夫に委ねるという、信頼に基づく組織運営です。
このような環境では、Z世代が持つ多様な視点や柔軟性が活かされ、結果的にストレスの少ない職場環境を実現できます。
Z世代との共存・定着に「らしさDialogue」
セルフマネジメント型の組織づくりには、「らしさDialogue」が有効です。「らしさDialogue」は、Z世代と先輩・管理職世代との価値観をすり合わせながら「共に成長できる職場」を実現する手段となります。
経営層・管理職・現場で「共通言語」が育つ仕組み

「らしさDialogue」では、組織全体の着実な変容に向けて、4つのフェーズで段階的に取り組みます。まず経営層で目指す組織の姿に対して合意形成を行い、次に経営層とリーダー間での合意形成、そしてセルフマネジメント型組織を作る土壌整備、最後に現場の自走へと段階的に進めていきます。
トップダウンの指示ではなく、組織内の多層間で対話を重ね、共通の目線を醸成するプロセスを重視することで、Z世代を含む全世代が納得感を持って働ける環境が生まれます。
Z世代の「らしさ」を活かしながら、自走するチームを育てる

「らしさDialogue」が目指すのは、リーダーシップの進化です。ボス的リーダーがコーチになることで、Z世代をはじめとする社員は情熱と才能を活かし、人生を楽しみながら結果へコミットできるようになります。
ストレスを無理に遠ざけるのではなく、Z世代が自信をもって動ける組織をつくること。これがZ世代の持つ柔軟性や多様な視点が組織の活力となります。
結果として、ワクワクしながら働く社員で溢れた魅力的な組織が実現されるのです。
Z世代のストレス耐性に寄り添えば、組織はもっと強くなる
Z世代のストレスへの対応を考える中で見えてきたのは、従来の「成果重視」の組織運営からの転換の必要性です。これは単なる世代対応を超え、組織全体の在り方を見直す機会でもあります。
Z世代の心理的安全性を担保し、世代を超えた関係性を築くことができる組織こそ、これからの時代を生き抜く強い組織となるはずです。
私たちも、長く、「成果を出すことが信頼を得る唯一の手段」だと考えてきました。
しかし最近は、それだけでは組織が本質的には強くならないことを、現場で強く感じています。
特にZ世代と向き合う中で見えてきたのは、スキルや実績以上に、”どんな関係性の中で働くか”が、行動や成長に大きく影響するということです。
成果だけを求める環境では、人は安全な行動しかしなくなります。
逆に、自分が受け入れられていると感じられる場では、自然と責任や挑戦に向かう力が育っていきます。
今、求められているのは「正解を出す人」より、「安心して話せる空気をつくれる人」ではないでしょうか。
私たちは、らしさDialogueを通して、そうした関係性が育つための対話の場づくりに取り組み、異なる価値観が”並んで存在できる組織文化”を育てたいと考えています。
「成果を出すこと」だけでは見えない、人や組織の本当の力を引き出すプロセスに興味のある方は、ぜひ一度、私たちとお話ししましょう!
【株式会社Meets & Dialogue| 代表 森慶介】
「Z世代とどう関わればいいかわからない」「世代間の価値観の違いに悩んでいる」「組織の雰囲気を変えたいけれど、何から始めればよいか見当がつかない」——そんなときは、まず「らしさDialogue」へご相談ください。一人ひとりの「らしさ」が活きる組織づくりを専門とする同サービスは、世代を超えた対話と協働が当たり前に生まれる職場環境の実現をサポートしています。
「らしさDialogue」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。
